基本は早期発見・早期療育
2歳児のイヤイヤにしては激しすぎる。気になる行動に疲れた私は、まずは区の保健センターへ。心理士さんの巡回がある日に相談予約を入れました。
簡単な発達検査を受けたところ、「発達に凸凹がある」との見立て。大きなところで1歳の遅れがありました。
ああやはり……と一瞬暗い気持ちになってしまいましたが、何か対策はあるはず。
「それでは何か対策はありますか?」と尋ねたところ、「あなたのお子さんよりもっと重くて、待っている人がたくさんいる。障害と断定しにくい年齢でもあるし、今は定期的に検査して様子を見ましょう」とのお返事。
そうして私と子どもが療育につないでもらえるまで、結局2年以上かかりました。発達障害の基本は早期発見・早期療育。もっと早く通えていたら、と悔しく思います。
発達の凸凹とは?
発達に凸凹がある子どもたちは、その場にあった行動ができない、相手の気持ちを推し量れない、興味や関心が偏る、社会行動やコミュニケーションに支障を来たす……等の困難から、社会とうまくなじめない特性を持っています。その困り度によっては、障害と認められます。
特定の音や味など感覚面で異常に敏感な特性もあります。例えば、髪を切る・爪を切るのを痛がる。味覚や食感が苦手でおかずを食べない、など。
こうした敏感さから、反射的に激しい不適応行動をとってしまうこともあります。賑やかで楽しいはずの場面なのに、音に耐えきれず耳をふさぎ、それが周囲から怒りをかってしまう。本人の思いと振る舞いが周囲と一致しないことから、子どもたちはストレスを抱えていきます。
学習場面で試験問題の意味や意図、求められていることをイメージすることができないことが判明し、就学後に発達障害の診断を受けるケースも少なくありません。
家族が支えること
こうした困難を、「わがまま」「性格の問題」「気にしすぎ」「親のしつけが悪い」、と受け止められてしまうことが、ままあります。
私の子どもは食感が過敏なため果物が食べられないのですが、祖父(元教師)からは、「苦手なものは無理やりでも口に入れて、克服してなきゃダメだ!」と矯正を求められました。
ところが無理じいはかえって本人の重荷になり、食事自体(そして祖父のことも)が苦手に。それから再び食へ関心をもってもらうのには、かなりの時間が必要でした。
教育熱心な人ほど「どうにかしてこの子を『良くして』やろう」と思いがちなのかもしれません。
適切な対応とは?
子どもの発達は大人になるまで変化します。周囲の支え方によっては、特性を抱えながら伸びゆく可能性もあります。
そのため、子どもの特性を理解した上での対応が求められます。子どもが安心できる環境を用意して「その子に合わせた働きかける」ことが必要になるのです。
たとえば、目で見る情報に関心を奪われがちな視覚優位の子どもに対しては、図を用いてこれからやることの見通しを示す、といった支援方法があります。
また、音の刺激が苦手な子には、音楽の授業中にヘッドホンをつけて大きな音から守るなどの対策があるようです。
具体的な示し方については、児童相談所に豊富な見本やモデルが置いてあります。いちど手にとって目を通してみると理解が深まります。
療育へのイメージ
では、発達に凸凹を抱える未就学の子どもたちが通う「療育」ってどんな場所なのでしょう?
発達障害という言葉は浸透してきましたが、障害に対する理解が薄いのと同じく、療育がどのような場なのか認知されていない印象があります。
思い切って、私が「子どもを療育へ通わせています」と周囲に打ち明けたころ…
「いまは何でも早どりだもんね!」「訓練して、早うしゃべれるようになるとええなぁ!」
早期英才教育と勘違いされてしまったり、発達障害は病気のように「治るもの」だと誤解されてしまったりと、チグハグな反応を得てしまいました。祖父母に孫が療育へ通っていることを打ち明けたところ、少なからずショックを受けたようです。
本音を言えば、私も通い始めるまで「療育」に対するイメージがわきませんでした。
「何か、子どもがより生活しやすくなるようにトレーニングをしてくれるところなのだろう」と、うすぼんやり思っていた程度でした。
通所の初日、他のお母さん達に「子どもたちは何をしているの?」と尋ねたところ、「遊んでいるだけよ、ふふ」と言われて拍子抜けしました。
遊んでいるだけ?それで何か身につくの?訓練しないの?
ところが、その「遊び」の中にヒントがたくさん潜んでいるのです。
じっさいの様子
私たち親子が通っている療育は、保護者児童通園型。最近のようすを先生に伝えたあと、親子別室で2時間過ごします(年齢により、親子同室の場合もあります)。
子どもたちは施設の先生たちと一緒に活動室や公園で遊び、おやつを食べます。工作やクッキングに取り組んだり、バスに乗ってお出かけすることも。
親は別室で過ごしますが、離れることができないお子さんと一緒に活動室で過ごすこともあります。お仕事に戻らなければならない人は外出されたり、過ごし方はそれぞれです。
親同士では最近の子どものようすを話し合ったり、放課後デイサービスやヘルパーなど就学後サポートの情報や、凸凹を抱えた子に理解のある医療機関の情報を交換することもあります。
施設のはからいで、卒園児の親御さんから就学後の様子を聞いて将来の見通しを得る試みもありました。
同じ悩みを持つ親同士、「そうそう、わかる!」と共感することも多く、悩みを吐き出すだけで、ずいぶん救われた思いになりました。
「遊び」から得られること
終わりの時間になると、先生方からきょうの遊びの様子を聞きます。
すると、「○○を通じて友だちと関わりを持とうとした」、「本人なりにタイミングをみていたので、こうした声掛けをしたら『やってみよう』という気持ちになり、新しい行動が見えた」など、こと細かい部分をしっかり見て、必要なところでは声掛けして支えて下さっているのです。
保育園の先生とのやりとりとはまた違う、新しい視点で支えていただいているなぁと、なるほど目からウロコでした。
先生たちが意識しているのは、「そのままの子どもの様子を受け止めるので、ここでは安心して遊んでほしい」、「子どもたちが遊びを通して自信を得られたらよい。それが今後の発達の伸びにつながる」ということ。
振り返れば「できない」「普通の子と違う」ことにばかり目が行っていた私。親として子どもが安心できる場を用意してあげられているだろうか?反省するとともに、先生がされていた援助を参考に、出来栄えよりも意欲を育てる声掛けを心がけることにしました。
気になったら、まずは相談を
療育には子どもの凸凹の度合いや特性によっていろいろなタイプがあります。
児童単独型施設のように、週5日子どもがひとりで通うところもあれば、入所型施設のように全寮制で過ごすところ、保護者児童通園型施設のように親子で通う施設もあります。
保護者児童通園型施設にも、単独通園型で療育機関のみに通うタイプ(未就園の低年齢児童の場合はこちらが多い)、並行通園型で保育園や幼稚園に通いながら月に数回通園するタイプと二種類あります。
また、集団で受ける場合もあれば、先生と一対一で受ける療育もあります。子どもの特性と今後の見立て・計画によって支援の仕方も千差万別です。
施設や運営主体によって雰囲気も異なります。療育を検討されるのであれば、まずは保健センターや通っている幼稚園・保育園、福祉事務所・児童相談所を通じて相談し、見学されることをおすすめします。
ライタープロフィール:かりがね茶
「子どもの発達が気になっているけど、健診で『様子を見ましょう』と言われた程度だし、療育に行かなくて済んだ」という方もいます。実際に通ってみると素晴らしい場なので、「もったいないな、もっと強く求めたらよかったのに」、と思います。現状では対応できる施設や職員が不足しているのでしょうが、すべての子どもに療育の視点をと願わずにはいられません。