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高校生、祇園のバーへ行く

夏休みにあった高校の三者面談。50代後半の担任に「高校時代の夏の思い出は何ですか?」と尋ねると「友達と祇園のバーで飲んだこと!」と予想外のお返事が。

時は昭和、40年前

先生が通った高校は「めざせ国立難関大」コースのある私立男子校(今は共学)。

部活禁止、毎日勉強漬けで、夏休みも「勉強合宿」。

そんな夏のある日、ご学友から「祇園に行かへん?」とお誘いが。「飲みに行くのも、祇園も初めて。楽しかったな~」と先生、遠い目に。

帰り道、「高校生がバーなんてよく払えたなあ」と息子がぽつり。

チッチッ、息子よ、そのビンボーすぎる発言はやめてね。おそらくその店はご学友のお父上の御贔屓さん。「まあ~坊ちゃん、今日はお友達と?」と歓待され、目が飛び出るような御会計はすべてお父上の「つけ」に。

いい時代を彷彿とさせるエピソード(お店のシーンは推測ですが)。40年たっても「一番の思い出」として残るなら安くはない(いえ、私のサイフではありませんが)。

時は令和、ついこの前

そこでふと思いつく。
コロナ禍の短い夏休み、どこにも行けない17歳。担任に倣い(?)、飲みに連れて行こうか。居酒屋やカフェではない、もっと上のランクの所へ。

目指すは先斗町のバー。
レトロな建物の窓の向うは鴨川。何よりママさんがめちゃ素敵。

息子にはつまみとデザート。お味は超本物。長居はせずに、ほんの「体験」。

でも、息子は「こんな路地奥にこんな店が」とお目目、パチクリ。

翌日は友人と、本格蕎麦店に

翌日、息子は友人と滋賀へ日帰り旅へ。
お昼時に下車した駅前に蕎麦屋が一軒。

入って「しまった」と思ったそう。ざる蕎麦一枚千円也。
息子の友人は「俺、スーパーで安売りの一袋10円の茹で蕎麦しか食ったことない」とビビり顔(その子の家はちゃんとしたお金持ちさんです)。

出された蕎麦もほんのちょっぴり。
でも、すごく美味しかったとか(ツウが通う手打ち蕎麦の店と判明)。友人も「少しなのにお腹が満たされた!」と笑顔に。

子を育てるは親にあらず

大人が通う世界にはほんまに美味いもん、こだわりぬいた空間や一流のおもてなしが。

背伸びしたい高校生に、そんな世界はどう映っただろう。

ちなみに冒頭の先生は「思考力」「表現力」をつける超一流の授業(国語)をしてくださるそう。(ハードなので生徒受けはよくないらしい)。

遠くへは行けなかった夏。
でもその道のプロの方々に出合い、きっと何かしら得るものが。

真価がわかるのは40年後?

少年の夏は、まだまだ続く。


ライタープロフィール:歴ママ

実家は東京。例年は、ばあばや従兄弟たちと伊豆の海へ。来夏に期待。
あっ、来年は大学受験の夏! どないしよ。